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有機超伝導体

有機伝導体には低温まで金属的な電気伝導性を示し超伝導になるものが数多くあります.(現在,有機超伝導体として知られているものは,種類)分子の構造や分子の積層の仕方の異方性から,低次元的な電子状態や超伝導状態が現れ,磁場中での振舞い(渦糸状態)などに面白い現象が見られます.また,超伝導波動関数の対称性やクーパー対形成状態などに通常ではない("unconventional"な)振る舞いが見られる物質もあり精力的な研究が進められています.超伝導状態に転移する温度は,銅酸化物高温超伝導体に比べてほぼ一桁低い10ケルビン程度です.(現在,最も高い超伝導転移温度はbeta'-(BEDT-TTF)2ICl2の高圧力下(8.2ギガパスカル)での14.2ケルビン.)超伝導転移温度が低いことや大きな結晶が得にくく(大きいもので1mm3程度),加工性が悪いために分子性伝導体結晶の電気伝導や超伝導研究は,もっぱら基礎的な物性研究として行われてきました.しかし,その研究,開発過程において生み出された分子やその分子性導体結晶は,金属,絶縁体,磁性体,スイッチ,整流,メモリ,発光,...というエレクトロニクス応用に必要なすべての電子機能を有し,また,物性物理に対しても新しい概念を生み出し続けてきました.これからも電子物性研究の実験的に重要な対象物質であるとともに,他の無機物質,金属系物質とは異なる,有機物,分子性物質が本質的に持つ“柔らかさ”が特長となる電子の新しい振る舞いの探索,解明が期待されます.

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