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分子ダイマー構造と電荷-スピン自由度

分子性導体の特徴は,柔らかい格子構造,分子構造に由来する圧力効果の有効性や比較的バンド幅が狭い(弱い分子間結合)ことによる相対的に強い電子相関効果を有することです.また,分子上また分子間に比較的大きく広がった分子軌道と電荷分布から電荷-スピンの自由度,また分子-格子間との緩やかな結合による非常に“柔らかな”電荷-スピン-格子結合による複合的な自由度と秩序が現れることが分子性物質に多彩な電子相が現れる背景になっています. 分子ダイマー構造をとるk型BEDT-TTF系有機導体では2つの分子の上に1個の電荷(ホール)があることでモット絶縁体となりますが,このときダイマー上で電荷がいる場所が不確定になること(自由度)があります.特にダイマー間に相互作用が働くときには,低温できちんと整列して並んで止まっているモット絶縁体になる前に,お互いに押し合いへし合いしてふらふらしている状態が出てきます.この状態では電気抵抗は絶縁体のように大きくても振動する電場には応答(誘電応答)するようになります.また,電荷が持つスピンにもこの電荷自由度は影響します.最近,活発な研究が進んでいるスピン液体状態との関係も大変重要です. 本質的に分子性物質が持っている“柔らかな”電荷-スピン-格子結合による複合的な自由度に起因する新しい電子状態を探索する研究を行っています.

最近の参考文献

"Anomalous dielectric response in the dimer Mott insulator k-(BEDT-TTF)2Cu2(CN)3."
M. Abdel-Jawad, I. Terasaki, T. Sasaki, N. Yoneyama, N. Kobayashi, Y. Uesu and C. Hotta
Phys. Rev. B 82, 125119-1-5 (2010).
"Relaxor ferroelectricity induced by electron correlations in a molecular dimer Mott insulator."
S. Iguchi, S. Sasaki, N. Yoneyama, H. Taniguchi, T. Nishizaki, and T. Sasaki.
Phys. Rev B 87, 075107-1-5 (2013).

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